陸上の大会にわが子が出場するたびに、他のクラブの子どもたちが履いていて気になる存在がスパイク。

このスパイクは一体、いつから履き始めればいいのでしょうか? どのように選んで、どのように履き慣らしていけばいいのでしょうか。

こども陸上クラブホップの代表である川辺コーチと、原井ヘッドコーチに聞きました。

「タイムアップ=スパイク」ではない

―― 今回は、陸上のスパイクについて教えてください。陸上の大会に子どもを連れていくと、他のクラブの子どもたちがスパイクを履いている姿を見かけます。

対して、ホップは、クラブ側から積極的にスパイクの情報を発信していないような気がするのですが、スパイクっていつから履き始めればいいのですか?

川辺:正直な本音を言えば、小学校6年間はスパイクを履かなくてもいいと思っています。その辺は、どう思う?

原井:同感です。

―― 衝撃的な話ですね。もちろん、低学年のうちは必要ないと素人でもなんとなく分かりますが、高学年になってくると、そろそろ必要になってくるのかな、なんて思っていました。

川辺:もちろん、履いては駄目とまでは言いません。例えば、お子さんがスパイクを履きたいと言っている、履いたらやる気が出そうだ、だから買うというのであれば、まだ分かります。

ただ、少なくともタイムを伸ばすためにスパイクを買うという考え方には否定的です。

―― それもびっくりです。スパイクを履けばタイムが勝手に0.5秒とか速くなると思っていました。

原井:陸上と言っても、短距離走もあれば長距離走もあります。1,000m走の場合は確実に、小学生のうちは履くなと言いたいです。

一方で、短距離走の場合は、小学校5年生くらいで、100m走を16秒切るくらいの走力があれば、履いてもいいのかなとは思います。ただ、積極的に履けとも言いませんが。

―― どうして、履いてはいけないのでしょうか。

原井:出力が足りないからです。出力がないと、タータンを強く蹴って、タータンに刺さったスパイクのピンを引き抜く動作ができません。刺さったままのピンが抜けないと、前に転がるような走り方になって、タイムで言えばかえって遅くなります。

ホップの記録会での子どもたちの様子。スパイクは履いていない

特に、1,000m走の場合は、1,000mを走り切る出力(筋力)が、ほとんど全ての小学生にないので、より遅くなります。

―― めっちゃ意外ですね。

川辺:タイムが遅くなるだけではありません。けがの問題もあります。

スパイクにはピンがあって、普通のシューズと比べて滑らないように設計されています。しかし、普通のシューズや裸足にもいい面があって、スパイクと比べて滑ってしまうがゆえに、足の指を自然に使えるようになれます。

滑らないように自然に使っていたこの指の動きが実は、すごく大事で、あまりにも早い段階でスパイクを履くようになると、足の指を使わないで走るようになってしまいます。足の指を使わなくても、滑らずに走れるからです。

足の指が使えないと、足の裏のアーチが下がって、足底筋膜炎になったり、体が発達して体重が重くなってくると足首、ひざ、股(こ)関節、腰などの関節痛が発症したりします。

―― なぜ、関節痛が発症するのですか?

川辺:人間の体は、足の指でぎゅっと地面をつかむと、足首の関節、ひざの関節、股(こ)関節が固まる仕組みになっています。関節が固まると、地面からの反発を受け止めて、上手に前進に生かせるようになります。

しかし、関節が固まっていない状態で走ると、足首、ひざ、股(こ)関節に力が入らないので、地面からの反発を上手に前進に生かせません。

さらに、体重が軽い間は、なんだかんだで走れるのですが、体重が増えると、練習をするほどに関節のけがのリスクが高まり、選手生命が短くなってしまいます。

―― 小さいうちから早く履かせてしまうと、タイムが伸びないばかりか、けがのリスクまで高まるのですね。

なんだか、速くなりそうだからとスパイクを履かせたくなる親の気持ちが私にもありましたが、いいことなさそうだな、という気になってきました。

スパイクは練習中ずっと履かない

―― とはいえ、ですよ。わが子が6年生になりました。100m走のタイムも15秒台になりました。なんだかやる気に満ちあふれていて、スパイクを履かせたら、ますますその気になるのではないかという子どもを育てる家庭では、スパイクを履かせても駄目というわけではないのですよね。

例えば、そのような子どもに最初に買うべき陸上用のスパイクと言えば何を選べばいいのですか?

川辺:もう、それは、アシックスの〈EFFORT 13(エフォート 13)〉を買ってくださいと言います。

―― どんなシューズなのですか?

川辺:コスパがいいし、陸上をしている人であれば誰もが通る定番中の定番のスパイクです。

―― 原井コーチも履いていましたか?

原井:もちろん。しかも、僕が履いていた時よりも進化しています。

―― 陸上のスパイクって裏にピンが付いていますよね。あれって、買った時に付属されてくるのですか?

川辺:いえ。ピンは別売りです。エフォート13に装着可能な18個入りの2弾平行ピン(5mm)を買ってください。

エフォート13は、片足7個のピンが付いているので両足で14個です。18個入りのピンを買えば両足に装着しても余りが出ます。

―― どうやって装着するのですか?

原井:ちょっと、実演しますね。最初、レジナスガードという花びらのような樹脂カバーを外して、ピンをつまんで指で回して装着し、ハンドルで最後は締めます。

―― 黄色い花びらみたいなやつは何のためにあるのですか?

原井:これは、学校のグラウンドなど、土のトラックで練習する時に装着してください。タータンでは金属ピンを装着して走ります。

―― もし、買ったら、試し履きはどうすればいいのでしょうか?

川辺:うーん。試し履きは、別にしなくてもいいです。

―― え、そんな感じですか? ホップに通っている子どもの保護者の中には「練習中に試し履きくらいはさせてもらえないか」と思っている人もいるはずなのですが。

川辺:そもそも、陸上のスパイクは、全力スプリントをする時にだけ履きます。サッカーのように、練習中にずっと履いているみたいな履き方ではありません。

例えば、中高生の場合、全力の本メニューの数本だけ履く感じです。本数が多い練習の時は、シューズで走る場合もあります。

―― 意外です。練習中、ずっと履くのかと思っていました。この辺、他のスポーツをやってきたけれど、陸上をやってこなかった保護者からすると、誤解していそうなポイントですね。

原井:ホップの練習でも、スパイクを履かせてほしいという保護者の方は実際にいらっしゃいます。ただ、積極的に認めていない理由は、今川辺さんがおっしゃったように、スパイクはそもそも練習中にずっと履く靴ではないからです。

また、全力スプリントをする時だけ履き替えるとなると、そのたびに履き替えの時間が発生して、練習量が減ってしまいます。限られた練習時間を削ってまで履き替える必要が小学生にあるかと言えばないと思います。

その意味で、どうしてもスパイクを履いてみたい、試し履きをしたいというのであれば、ホップ記録会で履いていただければと思います。

記録会は、全力でスプリントする機会ですし、コーチ陣も居るので、疑問や困ったことがあれば、その場で質問にもお答えできます。

川辺:そうですね。ホップ記録会はいい機会だと思います。ホップ記録会に参加する1つの目的として、シューズの試し履きもこれから、積極的に打ち出すといいかもしれませんね。

―― 了解しました。

いずれにしても、小学生のうちは、スパイクを無理して履かなくてもいい、無理に履くと、タイムが伸びるどころかかえってタイムが落ちる場合もあれば、将来的なけがのリスク増大にもつながると分かりました。

陸上の場合、スパイクは、練習中にずっと履いているわけではないという話も意外でした。

陸上競技を自分自身がやってこなかった保護者には、とても参考になる情報なのではないでしょうか。

ぜひ、多くの方に、読んでいただきたいですね。

(取材・文・写真:ホップ公式ブログ編集長・坂本正敬)

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